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とげ

いつもの如くお久しぶりですが、前回の宿題から、
どこから睡蓮の若葉がでてくるか、結論、必ずしも毎日ではない観察からはわかりませんでした。突き出している細い枝からとも限りません。目のような箇所、そこを中心に多数の若葉がせりあがるように増えて全体が盛り上がっている所、があちこちにできていました。まばらに水面を覆っていた落葉色の冬葉そのものが置き換えられて新しい葉になっているように見えたところもあったのですが、それはやはりおかしいですね。現在は薄黄色の花が咲いています。

今回の皮膚科の話は一人のとげ
の患者さんについて、自慢少々、と戒めです。
92歳の、元気尚じいさんです。足の裏の親指のすぐ下に小さな皮疹があり、かかりつけの内科の先生に見せたら皮膚科にいけと言われたとやってこられました。ぱっとみてああこれですとわかるものではありませんでした。体重がかかると痛いけれど、何かを踏んで怪我をしたというおぼえはないですとご自分でおっしゃいました。

表面が白っぽくなっていますが膿にはみえません。ためしに注射針でさしてみました。もし膿がたまっていればこの操作でピユッとでてくるのですが、案の定何もでてきません。足底は皮膚の表面の角層という部分がかなり分厚く、ここは切っても痛みはありませんので、今度ははさみで切り開いてみました。わかりません。
今度はピンセット(攝子と医療現場では呼びます。先が幅広い、細いなどいろいろありますが、用途は主に手術時、なにかをつまむため、ピンセットと同じです)で切り開いた下をさぐっていたら、なにか白い塊が飛び出してきてその中心にとげがありました。3-4㎜で硬く植物のとげに見えました。
とげがささりその周りの皮膚が反応変性をおこしていたと見えます。普通手足にみられるとげ、異物、は分厚い皮膚内に留まっていることが多く、実際に目で見え、また本人にとげがささったという自覚も多くはあるので、(ウッドデッキを手でこすったとか)診断はむつかしくありません。この方は、当初自覚はなかったのですが、とげでしたよと説明すると、植物ですかと聞き返され、そう言われればという自覚はおありになるようでした。

この患者さんを皮膚科に紹介してくださったかかりつけの内科医、なによりもアドバイスに従って皮膚科受診してくださった本人に応えることができ、めでたしめでたしで終了となりましたが、それには、ここで自慢です、私がなにかわからないけれど、こちょこちょとわかるためにできることをやったこと、が勝因となりました。角質を切り開いたあたりであきらめて経過観察にしていたら、もっと悪化し、その結果、患者さんもかかりつけ医も皮膚科へ紹介しても意味がないと思われたことでしょう。患者さんや他科のドクターに対し、皮膚科専門医を名乗っているからには、毎回めでたしで終わるわけでは決してないけれど、その病変部で何が起こっているかできるだけ追及すること、またそれを可能にするため基本知識習得も普段から怠らず行うことが大事と改めて思った次第です。